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不採算空港問題


不採算空港の量産時代に終止符、JALの減便増加でさらに苦境へ
- 09/11/09 | 07:10

http://www.toyokeizai.net/business/society/detail/AC/f1211ddea01313745fcddc0004e93982/

 日本全国に100近くの空港が点在する。99番目の拠点として来年3月に開港を控える茨城空港では、「首都圏第3空港」と大々的なキャンペーン を張っている。だが、国内線の就航予定はいまだゼロと、現実は厳しい。韓国のアシアナ航空がソウル便を1日1往復飛ばすため、何とか開港にこぎ着ける見通 しだが、集客次第では運航が継続されるか不明だ。同空港は開港時に北海道、大阪、福岡、沖縄への就航で年間旅客81万人を目指すという目標を掲げ、つぎ込 んだ事業費は約220億円に上る。甘い見通しが無駄な公共事業を生んだ象徴といえる。

 しかし、こうした状況は氷山の一角にすぎない。9 月に北海道の弟子屈飛行場が初めて閉鎖されたが、狭い国土に不採算空港がそこかしこにある。国は一部の空港収支を今年7月末にようやく公表したものの、詳 細な全国データは依然不明。代わりに航空政策研究会がまとめた全国41空港の収支では、国管理の20空港中、黒字は伊丹と新千歳の2空港、自治体管理では 神戸空港だけしかない(下表参照)。利用者が多い福岡と那覇は黒字でもよさそうだが、莫大な借用地代が収支を圧迫している。前原誠司国交相が「ハブ化」拠 点として名指した羽田も、拡張工事で借入金の利息負担が膨み赤字だ。

 こうした赤字空港が“濫造”された背景には、空港関連に使途を限定 した国の特別会計がある。航空会社は高い着陸料や海外では異例の航空機燃料税などを徴収されており、空港の建設費や維持運営費に充てられている。国や自治 体は「1県1空港」の掛け声の下、空港を新設しJALを飛ばせてきた。着陸料や燃料税などJALの支払い額は1500億円以上と膨大だ。

  経営危機にあるJALは当然、国内線削減を加速せざるをえない。撤退候補には信州まつもとや神戸、広島西などが挙がっており、リストには今年6月開港した ばかりの富士山静岡空港も含まれる。ただでさえ収支が厳しい中、JAL依存度が高い地方空港が廃港の危機に直面するのは必至。また前原国交相は特別会計の 見直しを言明しており、国内空港は生き残りを懸けた本格的な競争時代を迎えることになる。



空港需要、甘すぎた予測 達成4空港のみ 00年以降
http://www.asahi.com/politics/update/1122/TKY200911210393.html

2009年11月22日4時42分
 00年以降、開港もしくは滑走路を拡張した全国30空港のうち、着工前の需要予測よりも実際の乗降客数が上回ったのは4空港にとどまる ことが、朝日新聞の調べでわかった。8割以上が結果的に「水増し」で、中には予測値の2割にも達しない空港もあった。全国の空港は現在97カ所。国や自治 体の甘い予測値に基づき、次々に予算が付いていった構図が透けて見える。
 国土交通省によると、需要予測は滑走路やターミナルビルを新 設・拡張する場合、実現すればどれだけの乗降客が見込めるかについて、事業主である国や都道府県などが人口増加率や経済成長率、航空機の運航頻度などから 算出する。建設の適否や施設規模を決める重要な要素という。
 朝日新聞では、00年以降の約10年間に開港や拡張を実施した30空港を対 象に、例えば「開港5年後に100万人」などといった予測値と実際の乗降客数を比較し、「達成率」を割り出した。「01年」「05年」というように複数の 予測値がある場合は、直近の「05年」で算出した。
 この結果、実績が予測値を上回ったのは岡山、広島、山口宇部、天草の4空港。青森、高知、北九州など19空港は実績が予測値を下回った。
 達成率が最も高かったのは広島(110%)。滑走路の延伸に先立ち、94年度に「05年度298万人」と予測した。05年度の乗降客数は329万人だった。
  逆に低かったのは、(1)奥尻(17%)(2)隠岐(21%)(3)北九州(24%)――の順。人口98万人の都市にある北九州の場合、92年度に「05 年度522万人」と予測したが、実際は127万人(06年度)。02年度には「07年度283万人」と下方修正したが、それでも126万人で、達成率は 44%にすぎない。離島は生活路線とも言えるため、必ずしも高需要が求められているわけではないが、過大に見積もった例が多い。隠岐や種子島では「離島 ブームで旅客増を期待しすぎた」という。
 一方、成田、羽田、静岡、関西の4空港は予測年度に達していなかったり、予測に盛り込まれた滑 走路やターミナルビルなどが実際には造られていなかったりなどして、達成率は算出できない。稚内、丘珠(おかだま)、沖永良部の3空港は「100メートル と短い延伸」(丘珠)などとして、予測そのものがなかった。(川見能人、菊地直己)
   ◇
 需要予測の甘さは、行政刷新会議の「事業仕分け」でもやり玉に挙がった。
  16日午前、1兆円超の有利子負債を抱える関西空港について、仕分け人の一人は「あまりにも予測が甘く、莫大(ばくだい)な赤字が出ている。その結果を国 民の負担にするのは非常に不合理だ」と国交省航空局を批判。担当者は「残念ながら予測と実績は乖離(かいり)している」と認めた。
 関西空港は2本目の滑走路の着工前に「18年度4240万人」と見込んだが、昨年度は1510万人弱。現在は12年度1970万人に下方修正された。
 法政大学の五十嵐敬喜(たかよし)教授(公共事業論)は「需要予測は空港建設を判断する要素になるため、国や地方自治体は都合の良い数字を使って、高く見積もることが多かった。全国に97もの空港が乱立したのも、この甘い予測が後押しした結果」と手厳しい。
 これまでも同じような指摘はあった。総務省は01年度の行政評価・監視の中で、国交省に対して需要予測の精度向上を図るように勧告している。これを受けて、花巻や静岡は予測値を下方修正した。花巻では駐機場を1機分縮小し、出費も抑えた。ただ、こうした例は少ない。
  東京工業大学の屋井(やい)鉄雄教授(環境交通工学)は「予測は専門的な公式に当てはめて算出する場合が多く、データが外れると現実と異なりやすい」。天 変地異やテロなどが起きれば、さらに狂う。それだけに、「運航頻度や運賃など航空会社側のデータをもっと詳細に盛り込む仕組みが必要だ」と指摘する。
 その上で、空港整備の在り方にも注文をつける。「建設の適否を決めるには住民の意思が欠かせない。予測の算出過程をより公開して住民に提示し、判断を仰ぐようにすることが大切だ」

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