国交省によると、流水維持効果を建設費で代用することを公的に裏付けた計算マニュアルや通知はない。同省は環境保全の効果の試算はできないとした上で「水を確保するにはダムでためるしか方法がない。その建設費を効果額とみなすのが妥当」(河川環境課)と主張する。 建設費を支出と効果に二重計上する手法は、農林水産省も用水やダム事業で用いていたが、「費用が効果という理屈はおかしい」との専門家の批判もあり2年前に廃止した。 環境保全を掲げる設楽ダムは、流水維持の水量が貯水量全体の6割を占める。環境保全の効果をゼロと仮定すると、費用対効果は「2・0」に低下。国交省が昨年に本体着工した青森県の津軽ダムは、現行の「1・3」から不採算の「0・6」となる。 |
愛知県企業庁が34億円をかけて同県幸田町-蒲郡市間に整備した飲料水の連絡管(通称・幸田蒲郡線、約11キロ)が2002年度の完成後、一度も 使用されていないことが分かった。企業庁は「災害に備えた施設で、利用しない方が理想的」と説明する。しかし、国が同県設楽町で計画する設楽ダムに反対す る市民グループは「渇水時に連絡管を使えば、水系を越えて水を融通することができ、ダムを造る必要はなくなる」と主張。連絡管を活用しない県の姿勢を批判 している。
連絡管は鋼管製で、幸田浄水場(幸田町)と蒲郡ポンプ場(蒲郡市)をつなぎ、矢作川水系と豊川水系とで水を融通し合うのが目的。幸田側から蒲郡側に日量5千トン、蒲郡側から幸田側には2万5千トンを送水できる。
企業庁によると、連絡管は地震や水質汚染事故などで通常使用している送水管の給水が止まった際の補助的な位置づけ。ただ、完成後に水を正常に送れるかどう かをチェックする試験も行っていないという。同庁は、試験を実施しないことについて「一度水を流すと水あかが残って腐食するから」と説明。いきなり本番で の使用になる点についても「問題はない」としている。
災害で連絡管を使用する場合は県の判断で行う。渇水で利用したい場合は、水系ごとに水利権があるため、権利者間で協議しないと連絡管を開くことはできないという。
世界的な異常気象を背景に学識経験者などで組織する国土交通省の審議会は昨年、渇水時には水系にとらわれず広域的に水を融通し合うなど、柔軟な水資源の活用が必要になると報告している。
設楽ダムは治水・利水を目的とした総容量9800万トンの多目的ダム。渇水時に安定的に水を供給することが建設目的の一つとされている。
<連絡管> 浄水場やポンプ場からの送水管同士をつなぎ、相互に飲料水を送る施設。川の原水を直接送る導水路とは異なる。愛知県内には1982(昭和 57)年以降、幸田蒲郡線を含む9路線が造られ、総延長は約65キロ。全国的にも災害時を想定した緊急用連絡管の整備が進み、奈良県や神奈川県には渇水時 の利用を想定したケースもある。
(中日新聞)